狂言は、ある時代「教言」と書かれたといいます。
毎日の生活の中にある、人と人・人と自然がかかわりあって生きることの楽しさ、日本語の美しさ、豊かな笑いの心。
日本の伝統文化の素晴らしさや、一つの事を続けることの大切さ。
様々なことを教えてくれる芸能、それが狂言です。
600年の時を超えて全世界に通じる芸能が、日本にあること、そしてそれを無くさずに伝えてきたのは、日本人の「心」と「文化」の力にほかなりません。
いろいろなことを吸収する時期だからこそ、日本の文化に触れて欲しい。
「生」の、「本物」の狂言を観てもらえれば、絶対に楽しさも素晴らしさも伝わる。
本やインターネットを通じて、頭で理解するだけの知識ではない、何かを感じとってもらえる。そんな信念を持って、小・中・高校での狂言鑑賞教室を続けています。
先代・19世宗家和泉元秀が小学校3年生の時のこと。
戦後間もない時期に、文部省(当時)のご依頼で都内の小学校を巡回し、狂言鑑賞教室を行いました。
モノは満足になかったかもしれません。
しかし笑いで満たされた体育館には、必ず何かの「力」が生れたと思うのです。
時代が変わっても、人間が生きていく「力」は変わりません。
どの公演も、先生方やおとなの心配をよそに、みずみずしい感性で狂言を鑑賞する生徒さんの笑顔と笑い声があふれています。
狂言のもつ力が、観る人の力となり、その笑い声が再び狂言の力になっていくのです。
自分の活動の中で、子供さんに狂言を教える機会が、不思議と、また自然に増えています。きっと自分が子供好きだというのも理由の一つでしょうし、少しでも多くの方に、小さい頃から狂言に親しんでもらいたいという気持ちが、そういった活動につながっているのだと思います。
もちろん、全員がプロの狂言師になるわけではない子供さん達です。けれども実際に体験することで狂言への理解や興味は格段に、
確実に深まります。そしてもう一つ、修行ということ、技と心を伝えるとはどういう事なのか、を知っていただきたいと思うのです。
世の中には知らなくても良いことももちろんありますが、知っていたほうが良いことはそれ以上に沢山あるものだと思っています。
狂言には、人が生きる知恵や、楽しい生き方がつまっていると思います。お稽古の作法一つ一つをとっても、何一つ無駄なものはないことが、知れば知るほど感じられます。
そして、狂言のお稽古の中で「できない」事はない、というのも伝えたいことの一つです。時間がかかったり、時にはうまくいかないことがあっても、できないことはないと信じてやれば、必ず何かが自分の中に生まれるものです。
狂言は楽しい、いいものだなあと思ってもらえれば嬉しいですしそれを600年の長い年月伝え守ってきたのは、自分達と同じ人間なのだ、という当たり前のことを考えるとき、自分も狂言の未来に対してできることが必ずある、と思うことができます。
子供さんに狂言をお教えする中で、自分も教えられることばかりです。常に何を伝えたいのか、どう伝えればいいのか。初めて狂言に接する子供さんだからこそ、よりきちんとしたものを、確かなものを伝えられるように考えていなくてはいけないと思います。
自分の身なりから立ち居振る舞い、全てを整えておかなくては・・・と
鋭い子供さんの目に晒されることは、本当に身の引き締まる思いです。けれども、こうしていろいろなことを考える機会をいただいたり、子供さんとのふれあいを通して感じる様々なことは自分のかけがえのない財産になると信じています。
千葉市若籐区 千葉市桜木公民館
第2・4木曜、17:00~20:00
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和泉流宗家 加賀能登事務所
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