平成元年(1989年)、姉の和泉淳子が二十歳を迎え、史上初女性狂言師誕生記念公演を国立能楽堂で開催しました。
成人した女性のプロ狂言師というのは狂言600年の歴史上記録がありません。
男性・女性という以前に「子供」として、子方の必要な狂言に幼少時のみ出演していた女性はこれまでにもいらっしゃいますが、その後も修行を続け大人のプロとして活動した女性はなかったわけです。
それぞれ、能楽の流儀には「流是」といって各々に固有の決まりごとがあります。
狂言和泉流の流是には、女性を禁止するという決まりはありませんでした。また、他の流儀をみてみても、女性を禁止しているのは能のシテ方喜多流のみで、それ以外の流儀には女性の職分が相当数いらっしゃいます。
ただ、やはり修行の機会という点で考えますと、周囲の環境や師匠にかなりの努力と女性楽師の育成に対する高い意識がないと、男性中心の社会であるだけに厳しい状況があるというのが現実です。
そういった背景の中で、3歳の初舞台以来、男性と変わらぬ修行をさせてもらえた自分達は幸せだと思っています。師匠の「男性・女性という前に一人の狂言師として、『人間狂言師』として舞台に立て」という言葉が、師匠の信念を表し、そして自分達の原点をつくっています。
女性狂言師が、自分達だけで終わることのないよう努力をしていかなくてはいけないと肝に銘じています。
私と姉は3歳違いで、同じように修行をしますと、当然「史上初女性狂言師」は年齢順で姉しかなることができません。「史上二号女性狂言師」という肩書きをつけられることもありましたが、二番目以降はあまりありがたみも無いようです(笑)。
自分としてはその辺あまりこだわりもないので、二番手の気楽さを享受してきましたが、姉が出産して「史上初母親狂言師になった」とお話したときのことです。友人から「史上初母親狂言師なら、あなたにもなるチャンスがあったのに!」と言われ、目から鱗が落ちました。
そうか!母親は別に年齢順でなるものではなかった!ということに初めて気付きました。盲点でした…。
とはいえ今もって一人身であることを考えると、競り合うレベルにもなかったので、これまた何のこだわりも悔しさも生まれませんでした。ただこの次の「史上初」になるチャンスは、あまりいただけないものしかなさそうだな、と一応考えてはみました。
「史上初バツイチ女性狂言師」か「史上初お祖母ちゃん狂言師」。
どちらもなってもならなくてもいいようなものですが、どうせなら後者になれるよう頑張りたいと思います(笑)。
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